LabVIEWは計測データの生成、処理といった高度に数学的なアプリケーション作成のためのツールとして非常に役立つということを述べてきました。開発、販売元のナショナルインスツルメンツ社がGPIBインターフェースを主力製品としてきた歴史があり、LabVIEWは計測機器の制御プログラム開発ツールとしての性格が強いわけです。とはいえ、LabVIEWのシーケンス制御の豊富な機能も半端ではありません。 計測機器は精密なシーケンス制御の対象でもあり、一方で、シーケンス制御はロボット、生産・製造ライン等のFAシステムではその中核となる技術です。よく使用されているシーケンスコントローラとしてPC(Programable Controller)があります。 三菱電機は、このPCにシーケンス制御をもじって「シーケンサー」という商品名をつけています。その影響から、三菱電機以外のPCのことまでも「シーケンサー」と呼ぶようになっており、業界筋では、PCの制御プログラムを作成する技術者に「シーケンサー屋さん」というあだ名までがついてしまっています。本稿でもPCではなく、シーケンサという名称を使うことにします。
シーケンサへのプログラム入力時に作成するのが、ラダー(梯)チャートです。(図1) チャートの横線上に、リレー、タイマーを配置し、上から順に実行させるためのプログラムをシーケンサのRAMへ転送します。 ラダーの1.2段に注目して下さい。Xが入力、Yが出力です。押しボタンスイッチX001(押している間だけONになるA接点)を押すと、出力リレーY000のリレースイッチY000が励磁され、X003(押している間だけOFFになるB接点)を押して回路を切断するまで、主力リレーY000がONになり続けます。これがシーケンス制御特有の自己保持回路(lock up circuit)といわれる動作です。
LabVIEW2まではこの自己保持機能を作成できるVIがLabVIEWに組み込まれていたのですが、残念なことにLabVIEW3以降省略されています。
自己保持回路をLabVIEWで実現するために、図2のコネクタを持つ出力リレーのサブVI[G-Bool]を作成します。
サブVI[G-Bool]は、[入力T/F]に"1"が入力されると、その後[RD;0/WR;1]に1が再入力されるまで[出力T/F]コネクタから連続して出力されます。
[G-Bool]のパネルとダイアグラムは図3、4のように作成します。 このダイアグラムのポイントは、図5のSelectアイテムにあるのです。Selectアイテムは、[s]コネクタに1(true)が入力されたとき、[t]コネクタからの値を[s?t:f]コネクタから出力します。逆に、[s]コネクタに0(false)が入力されたときには、[f]コネクタのデータを[s?t:f]コネクタから出力します。
[G-Bool]はアイコンのデザインを変更し、名称を変えて(図6ではLup.viに変更して保存)、何個でも使用することができますから、シーケンサのY000等の出力リレーと同じように使用できます。
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Inouye Yasunori